鍼灸論考

logo-313541_1280鍼灸論考

多くの情報が簡単に入手できる昨今。情報の選択に迷うこともまた、多くなっているはずです。「鍼灸論考」では、鍼灸に関する情報をAcuPOPJがセレクトして提供します。

新・鍼灸ワールドコラム

 この記事は、医道の日本誌において人気を博していた建部陽嗣氏の連載「鍼灸ワールドコラム」の続編です。医道の日本誌は2020年7月号で休刊しましたが、「鍼灸ワールドコラム」はどんなかたちでも読みたい、残してほしいという読者の強い要望があった、と聞いています。また、鍼灸に関連する最新の英語論文を読み解く意義を鑑み、AcuPOPJにて続けることとなりました。連載第10回より松浦悠人氏(東京有明医療大学)との共同執筆となります。

◆建部陽嗣(たてべ・はるつぐ)氏より
 鍼灸の研究も、他の科学分野と同様、世界的に英語で発表されることが多くなった。しかしながら、英語という言語のハンディキャップを抱え、毎日の臨床に追われている我が国の鍼灸師にとってその内容を把握することは容易ではない。
 筆者はこれまでに、医道の日本誌において、2011年6月から2020年7月の雑誌休刊となるまでの計110回、鍼灸に関する最新の英語論文を紹介・解説する「鍼灸ワールドコラム」を執筆してきた。その続編とでもいうべきコラムを、AcuPOPJのHP上で行っていきたい。


【筆者略歴】
医学博士、鍼灸学修士、はり師・きゅう師。
明治鍼灸大学(現・明治国際医療大学)卒業、同大学大学院修了、京都府立医科大学大学院医学研究科修了。鍼灸専門学校 講師、京都府立医科大学医学部医学科 助教、量子科学技術研究開発機構 研究員を経て、現在、外資系会社にて神経難病を未病で発見する検査法の開発部署に所属。責任者として従事。
◆松浦悠人(まつうら・ゆうと)氏より
 研究論文は、臨床のなかでの疑問や手応えを科学的な手法により明らかにしたものであり、過去の知識と最新の知見の結晶です。毎年膨大な量の論文が発表され、鍼灸に関する新しいエビデンスもどんどん作られています。論文からは、臨床家・研究者・教育者・学生それぞれにとっての有益な情報を得ることができますが、その多くは英語であることや内容の解釈にトレーニングを要する場合もあります。本コラムでは英語論文を解説し、明日からの臨床・研究・教育のヒントになるような論文を紹介していきたいと思っています。


【筆者略歴】
東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 助教、埼玉医科大学東洋医学科 非常勤職員。はり師・きゅう師、博士(鍼灸学)。
東京有明医療大学卒業、同大学院を修了し博士(鍼灸学)を取得。埼玉医科大学東洋医学科 非常勤職員、東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 助手を経て2021年4月より現職。

連載記事

■第1回 世界の研究者が関心を寄せる鍼鎮痛のメカニズム 2020.09.10

■第2回 経絡に流れているのはイオン? 2020.10.09

■第3回 アルコール依存症への鍼 韓国の最新基礎研究 2020.11.12

■第4回 中国の研究グループが発表した刺絡療法の臨床結果 2020.12.17

■第5回 更年期症状の不眠に鍼治療が効果的 中国発信のRCT結果 2021.01.29

■第6回 サブスタンスPなしでは鍼の効果は現れない? 2021.03.05

■第7回 立て続けに報告されたわが国での鍼灸事故4症例 2021.05.27

■第8回 米国発の耳鍼療法はがんの慢性痛に有効か 2021.12.29

■第9回 浅刺鍼での脳機能の変化と鎮痛作用が証明された 2022.03.07

■第10回 「脳腸相関」による不安やうつ症状は鍼灸で改善できるか 2022.04.21

■第11回 急性期脳卒中患者にリハビリと鍼を併用した観察研究 2022.06.01

■第12回 うつ病患者の不眠症を対象とした鍼通電療法の大規模RCT 2023.06.08

■第13回 鍼治療が痛みの破局的思考を改善 慢性頸肩部痛の研究で証明 2023.11.05

■第14回 世界の一流医学雑誌が掲載した脳卒中患者への鍼治療 最新のランダム化比較試験 2024.08.04  new!

 

鍼灸病証学

 この記事は、医道の日本誌において8年間連載してきた「臨床に活かす古典」の執筆者、篠原孝市氏による新しい連載です。篠原氏は鍼灸の古典研究を牽引する重鎮。2019年に開催された日本伝統鍼灸学会学術大会の特別対談企画にて、古典鍼灸における病証学の体系化が必要であると説きました。古典の解釈が多様化するなか、臨床に活かす病証学の指針を記していただきます。

◆篠原孝市(しのはら・こういち)氏より
 目の前の病態を解析すること、そしてそれに基づいて選経や選穴、手技を行うこと、これが鍼灸の基本である。病態解析の基本原理は、古く『素問』『霊枢』『難経』『明堂』などに述べられているが、その具体的な展開=病証学は、後代、とりわけ12世紀以降の医書や脈書において詳細である。
 筆者は2012年5月から2020年7月まで、医道の日本誌に「臨床に活かす古典」を連載し、臨床鍼灸と古典の諸問題を論じてきたが、雑誌の休刊に伴いいったん区切りとなった。そこで、前記連載でもたびたび主張してきた現在急務の課題、「鍼灸病証学」の体系化に着手することとする。
 今回の連載では、はじめに中国古代の病態認識の原理を論じる。次いでその原理がどのように派生展開していったかを明らかにする。そのことを通じて、将来の鍼灸病証学を展望しようとするものである。


【筆者略歴】
篠原鍼灸院 院長。日本鍼灸研究会 代表。はり師・きゅう師。
東京高等鍼灸学校(現・東京医療専門学校)卒業。1978年、篠原鍼灸院を開院、現在に至る。1988年以来、日本鍼灸研究会(關西鍼の會、東京鍼の会)を主宰。

連載記事

■第1回 「病證」「病証」「病症」の違い 2020.09.24

■第2回 病証学は人体の内外を解析する学問 2020.10.24

■第3回 病証と〈気〉〈内気〉〈五蔵〉の関係 2020.11.30

■第4回 病証と〈蔵府〉〈精気〉の考え方 2021.01.14

■第5回 虚していく運命の〈精気〉 2021.02.12

■第6回 蔵府概念が医学の根底をなす 2021.04.30

■第7回 蔵府概念の根底にある陰陽五行 2021.06.30

■第8回 人体で繰り広げられる表裏の関係 2021.12.10

■第9回 〈表裏〉関係とは〈病いの深さ〉の認識の一部である 2022.01.31

■第10回 五行色体表の成り立ちを正しく知る 2022.04.11