鍼治療は慢性的な痛みに効果ありか - アメリカ

「鍼治療は慢性的な痛みに効果がありますか?科学ではこう言われています。」という記事がアメリカのWashington postのニュースサイトに掲載されています。(Washington post 2023.7.24)

日本では、厚生労働省の「国民生活基礎調査」で、国民の多くが慢性の痛みを抱えて生活しており、生活の質の低下の一因となっていることが分かっているようです。

ただ、痛みの客観的指標がなく「一人で悩んでいる」という様な実態から、その対策が課題となっているんですね。

慢性疼痛の患者数の多くは、変形性脊椎症・関節症、椎間板ヘルニア、頸肩腕症候群、関節リウマチなどの疾患が原因で起こる痛みとのことです。

また、過敏性腸症候群、婦人科疾患や歯科口腔外科疾患なども原因になりうるんですね。

 
受療頻度が高いのは、「肩こり・腰痛・手足の関節痛・頭痛」などです。

痛みは慢性化すると、身体機能だけの問題ではなくなり、精神医学的要因、心理学的要因、社会的な要因がが、さらに痛みを増悪させ、遷延させるといわれています。

2016年に、国際疼痛学会(IASP)が横浜で開催されました。

国の事業としても疼痛疾患に対する施策が進められ、厚生労働省の研究班の監修で「慢性疼痛診療ガイドライン」が発行されています。

「慢性疼痛診療ガイドライン」(2021年)は、10学会の関与と、患者会・看護師の代表の参加を得て作成されたものです。

以下が10学会です。

  1.日本運動器疼痛学会
  2.日本口腔・顔面痛学会
  3.日本疼痛学会
  4.日本ペインクリニック学会
  5.日本ペインリハビリテーション学会
  6.日本慢性疼痛学会
  7.日本腰痛学会
  8.全日本鍼灸学会
  9.日本頭痛学会
 10.日本線維筋痛症学会

鍼灸の学会の中では、全日本鍼灸学会が関与しています。

 
今回のこの記事では、2020年から医療センターで、慢性腰痛に対する鍼治療の対象を開始したとあります。

鍼治療が、慢性閉塞性肺疾患や便秘などの症状に対して有益な治療法であるというのも、過去数十年にわたる臨床試験から示唆されているということです。

研究者たちは、以下のように、鍼治療の比較試験をおこなったそうです。

“A 2018 meta-analysis of over 20,000 patients in 39 high-quality randomized controlled trials found that acupuncture was superior to both sham and no acupuncture for back or neck pain, osteoarthritis, headaches and shoulder pain. These outcomes mostly persisted over time ? even after 12 months of receiving treatment.”

要点は次のようになります。

・2018年に20,000人以上の患者を対象とした比較試験を実施した
・背中や首の痛み、変形性関節症、頭痛、肩の痛みについて、鍼治療は偽治療と鍼治療なしの両方よりも優れていることがわかった
・治療を受けてから12カ月後も、ほとんどが長期にわたって持続した

 
慢性の痛みに対する鍼灸治療は、当サイトでもいくつかご紹介してきました。そちらもあわせてご参照ください。

 ⇒ 鍼灸は慢性的な緊張性頭痛を軽減する可能性あり

 ⇒ 20分の鍼灸治療で慢性疼痛を軽減

日本でもペインクリニックが増えていますが、鍼灸院も慢性の痛みの助けになるということですね。

 
今回の記事の詳細については、「Washington post」のサイトをご参照ください。

◆Washington post – Does acupuncture work for chronic pain? Here’s what the science says.
https://www.washingtonpost.com/wellness/2023/07/24/does-acupuncture-work-chronic-pain/

 
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