イギリスで慢性痛の治療に鍼灸を用いることは妥当か否かと議論が白熱しているという記事が健康サイトに掲載されています。(NHS)
イギリスといえば、医療費は無料、つまり患者は負担しなくて済み、すべて税金で賄われる国だといわれています。
今回の議論の発端は、医者と研究者の専門誌『BMJ』上で、鍼灸支持者と懐疑派の批評家がそれぞれの主張をしたためだそうです。
南デンマーク大学の研究者は、臨床的な有益性が不確かであるのに手続きや医療サービスに多額の費用を費やすのは不当だと主張しました。
そのレポートの見出しは、「十分な証拠もないのに、鍼灸で痛みと戦うために税金を38億円も費やす」というものでした。
これはかなり片寄りのある見出しですが、センセーショナルで注目されることになったようです。
鍼灸は安全な代替療法だと主張してきた英国鍼灸協会の研究者も、一方では、鍼灸への商業的な関心が低いために調査は十分でないと感じていると言います。
論点をまとめた部分を以下に引用します。
要点は以下のようになります。
◆ 要約すると、鍼灸の利点を概説する証拠は存在するが、それは強力な証拠ではない。
◆また、鍼灸の研究で見られる効果は小さく、プラセボ効果があることも懸念される。
多くの臨床試験は観察者にも患者にもわからないようにして、プラセボ効果や観察者バイアスの影響を防いでいますが、鍼灸の臨床試験でそれをするのは難しいという問題が大きいようです。
また、他の治療法との比較で明確に有効と結論づけられる証拠も限られているそうです。
そうした状況なので、鍼灸の支持者と懐疑派が歩み寄る余地はほとんどないとみられています。
当サイトでは、プラセボ効果についての記事を紹介しています。こちらもご参照ください。
⇒ 鍼灸の人気が高まる一方で 鍼灸の科学と効果の理由 – アメリカ
鍼灸治療のメカニズムが解明されるにはまだまだ時間がかかりそうですが、鍼灸を試す人は今後も増えていきそうですね。
今回の記事の詳細は「NHS」のサイトをご参照ください。
◆NHS – 2018.03.08 Experts debate whether acupuncture can relieve chronic pain
https://www.nhs.uk/news/medical-practice/experts-debate-whether-acupuncture-can-relieve-chronic-pain/