鍼灸による不妊治療・卵巣機能回復の可能性

「灸はcAMP/PKA/CREBを活性化し、卵巣顆粒膜細胞におけるステロイド生成を促進することで、早産卵巣不全ラットの卵巣機能を改善する」という記事がオランダの学術サイト「サイエンスダイレクト(ScienceDirect)」に掲載されています。(ScienceDirect 2024.5.20)

ScienceDirectはオランダの出版社であるエルゼビアによって運営されているウェブサイトで、2,200の学術雑誌と25,000以上の電子書籍にアクセスするためのプラットフォームとなっています。

今回の記事は「ステロイド生化学と分子生物学ジャーナル」第242巻(2024年9月)の研究論文としてその要約が紹介されています。

cAMP/PKA/CREBというのは、細胞内の情報伝達に重要な役割を持つ物質で、細胞内の働きの活性化や調節に関与しています。

お灸が卵巣機能の働きを高めるということなんですね。

 
お灸が卵巣機能の働きを高めるということについて、この研究論文のハイライトとして記載されていますので一部を引用させていただきます。

・Moxibustion not only elevates sex hormone levels but also restores ovarian function in POI rats.
・Moxibustion primarily enhances ovarian function by influencing GCs, not theca cells.
・Moxibustion modulates ovarian steroidogenesis in GCs through the cAMP/PKA/CREB pathway.
・Proved the effectiveness of moxibustion treatment of POI, and Laid a theoretical foundation for moxibustion treatment of POI.

要点は次の通りとなります。

・灸は性ホルモンレベルを高めるだけでなくPOI(早発性卵巣機能不全)ラットの卵巣機能も回復させる

・灸は主に卵胞膜細胞ではなく卵巣小胞に作用して卵巣機能を高める

・灸は、cAMP/PKA/CREB経路を介してGC(卵巣顆粒膜細胞)における卵巣ステロイド生成を調節する

・POI(早発性卵巣機能不全)の灸治療の有効性を証明しPOIの灸治療の理論的基礎を築いた

 
婦人科系と鍼灸治療については当サイトでもいくつかご紹介してきました。そちらもあわせてご参照ください。

 ⇒ 不妊治療と鍼灸 - アメリカ

 ⇒ 婦人科系の炎症に鍼と灸の併用が有効 - アメリカ

 ⇒ 不妊治療だけでなく妊娠中も産後のケアも鍼灸は強い味方 - アイルランド

鍼と合わせてお灸を使用することで、婦人科系の機能を高める可能性があるというのは、不妊治療を実践している人たちにとって嬉しいことですね。

鍼灸治療は不妊以外にも、生理痛や更年期障害などに対しても効果が期待されています。

そして、婦人科系疾患ではホルモンバランスが重要な要素であるため、鍼灸によってそのバランスを整える効果が期待されるということなんですね。

 
今回の記事の詳細については「サイエンスダイレクト」のサイトをご参照ください。

◆ScienceDirect – Moxibustion ameliorates ovarian function in premature ovarian insufficiency rats by activating cAMP/PKA/CREB to promote steroidogenesis in ovarian granulosa cells
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0960076024000955

 
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