「難治性の痛みを伴う一部の救急外来患者に鍼治療が効果的」という記事がアメリカの医療情報サイト「MEDPAGE TODAY」に掲載されています。(MEDPAGE TODAY 2023.10.11)
ED(Emergency Department)=救急外来は、内因性・外因性に関わらず、すべての緊急度・重症度の患者に対応できる外来です。
米国救急医学会において、鍼治療が難治性疼痛患者の痛みを和らげて、救急外来(ED)への再来院を減らすことができると報告されたそうです。
アメリカの医療システムでは、病院の最初の窓口が救急外来になっており、そこで、専門の診療科に進んで行くか、治療は必要無いかを決めていきます。
救急外来が行う処置としては、痛みを取り除く治療を行うのは難しい所です。
しかし、鍼灸師がいる病院では鍼灸師が救急外来に来て、疼痛緩和の鍼治療が出来るということなのです。
記事では、救急外来スタッフが、鍼治療が疼痛治療の選択肢となり得ることを、以下のように述べています。
“In addition, 65% of ED staff said that acupuncture availability reduced patients’ need for opioid prescriptions, and 35% said acupuncture treatment in the ED reduced the need to admit patients to the hospital for pain.”
要点は次のようになります。
・救急外来(ED)スタッフの65%が、鍼治療により、患者のオピオイド処方の必要性を減少させる
・35%が、救急外来における鍼治療により、患者が痛みのために入院する必要性が減少した
さらに、「患者は救急外来での治療に概ね満足しており、スタッフはオピオイドの処方と入院率の低下を実感している」とのことです。
オピオイドは「麻薬性鎮痛薬」のことですが、麻薬ではありません。
中枢神経や末梢神経に存在する、オピオイド受容体への結合を介して、モルヒネに似た作用を示す物質の総称です。
植物由来の天然のオピオイド、化学的に合成・半合成されたオピオイド、体内で産生される内因性オピオイドなどがあります。
オピオイドが結合する受容体は脳・脊髄や末梢神経に存在して、脳、脊髄、末梢神経の全ての部位に作用していると考えられているんですね。
オピオイドは手術中・手術後の痛み、外傷による痛み、分娩時の陣痛等の急性痛や、がんによる痛みや慢性痛に対して鎮痛薬として広く用いられます。
しかし、オピオイド鎮痛薬がどの部位に作用して痛みの伝達を抑制するのかは、完全に解明はされていないといわれています。
また、副作用も各種あるようですね。
救急外来などでの鍼治療については当サイトでもいくつかご紹介してきました。そちらもあわせてご参照ください。
鍼治療によって、オピオイド鎮痛薬の使用が減少するのであれば、治療法の一つとして心強い選択肢なりそうですね。
今回の記事の詳細については「MEDPAGE TODAY」のサイトをご参照ください。
◆MEDPAGE TODAY – Acupuncture Effective for Some ED Patients With Intractable Pain
https://www.medpagetoday.com/meetingcoverage/acep/106743