退役軍人への鍼治療 - アメリカ

「ラスベガスのクリニックは、退役軍人が PTSD、うつ病、不安症状と闘うために鍼治療を使用しています」という記事がアメリカのニュースサイト「News3lv」に掲載されています。(News3lv 2023.11.28)

ラスベガスのクリニックでは、退役軍人のPTSD、うつ病、不安に関連する症状の治療をするために、鍼治療を支援しているそうです。

PTSDつまり心的外傷後ストレス障害は、災害、暴力、性被害、重度事故、戦闘、虐待など、命の危険を感じたり強い恐怖感を伴う体験の後に始まる、日常生活に支障をきたす強く不快な反応です。

症状のうちの「侵入症状」は、トラウマとなった出来事の苦痛な記憶が突然蘇ってきたり、悪夢が繰り返されたり、それを思い出して動揺したり、その時に、動悸や発汗などの身体の生理的反応を伴うんですね。

「回避症状」は、その出来事を思い出したり考えたりすることを避けようしたり、思い出させる人物、事物、状況や会話を回避する症状です。

また、恐怖や戦慄、怒り、恥辱などの否定的な感情しか感じなくなったり、興味や関心を失って、幸福や愛情などの感情が持てなくなることもあるのだそうです。

その他にも、イライラ感、無謀になったり自己破壊的な行動をしたり、過剰な警戒心や驚愕反応、集中困難、睡眠障害などがみられるんですね。

これらの症状が1ヵ月以上持続し、それによって顕著な苦痛感や社会生活や日常生活の機能に支障をきたしている場合、医学的にPTSDと診断されます。

 
治療は、精神療法(心理療法)や薬物療法、物質使用障害やうつ病などの他の精神障害の治療を行います。

薬物療法では抗うつ薬は、PTSDに対する第1選択の治療法と考えられているため、うつ病がみられない人でも第1選択となります。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やミルタザピン、ベンラファキシンなどの他の抗うつ薬が最もよく推奨されます。

不眠や悪夢の治療には、オランザピンやクエチアピン(抗精神病薬)、プラゾシン(高血圧の治療薬)などの薬が投与されることもあるんですね。

しかし、これらの薬で、PTSD自体は治療されないといわれています。

記事では、鍼治療について、以下のように述べています。一部を引用させていただきます。

Acupuncture is an ancient form of Chinese medicine where needles are injected into the body at certain points to release energy.

“Instead of suppressing the symptoms, because we believe the body has its own healing power,” said clinic Medical Director Dr Yoojin Lee-Sedera. “We try to stimulate that so your body can heal itself.”

要点は次のようになります。

・鍼治療は古代の中国医学で、特定のポイントで鍼を体内に注入してエネルギーを放出する

・症状を抑えるのではなく、体には独自の治癒力があり、私たちは、体が自然に治癒できるように、それを刺激しようとする

ある退役軍人の女性は、鍼治療のような統合療法を受ける前は、1日に40錠以上もの錠剤を服用し、10年間オピオイドを使用していたそうです。

薬物療法も、過酷な治療になっていたのですね。

鍼治療は、もともと体内にある「気・血・水」のバランスを改善することを目的とし、その改善によって病気や症状が良くなるものなので、体に負担が少ないといわれています。

 
退役軍人のPTSDに対する鍼治療については当サイトでもご紹介してきました。そちらもあわせてご参照ください。

 ⇒ 外傷性脳損傷とPTSDの睡眠は鍼灸で改善 - アメリカ

精神的なダメージやそれによる各種症状の改善に、少しでも鍼灸治療が役に立つといいですね。

 
今回の記事の詳細については「News3lv」のサイトをご参照ください。

◆News3lv – Las Vegas clinic uses acupuncture to help veterans combat PTSD, depression and anxiety symptoms
https://news3lv.com/news/local/las-vegas-clinic-uses-acupuncture-to-help-veterans-combat-ptsd-depression-and-anxiety-symptoms

 
acupuncture24
(画像はNews3lvより引用)