「新しい治験では、実行可能な過敏性腸症候群治療としての鍼治療がテストされています」という記事が、アメリカの、医師向けの情報ポータルサイト「HCPLive」のサイトに掲載されています。(HCPLive 2023.1.3)
研究者らは、過敏性腸症候群(IBS)の患者を治療するために、2つのタイプの鍼治療を行い、有望な結果を発見したとのことです。
過敏性腸症候群(IBS)とは、精神的ストレスや自律神経失調などの原因で、腸が刺激に対して過敏な状態になり、便通異常を起こす病気です。
通常の検査では、腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないのに、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じるというものです。
日本では、10人に1人が抱えるといわれ、現代病ともいえるでしょう。
過敏性腸症候群(IBS)には3つのタイプがあります。
(1)「慢性下痢型」は、別名「神経性下痢」。ちょっとした緊張や不安があると便意を催し、激しい下痢の症状があらわれます。
(2)「不安定型」は、腹痛や腹部の不快感とともに、下痢と便秘を数日毎に繰り返します。腹部が張って苦しく、排便したいのに出ない、また出てもごく小さな便しか出ないというものです。別名「交代制便通異常」と呼ばれます。
(3)「分泌型」は、強い腹痛が続いた後に大量の粘液が排出されます。
内臓神経が過敏となる原因の多くはストレスであったり、暴飲暴食や過度の飲酒、不規則な生活などによるものといわれています。
対策としては、食生活の改善・生活習慣の改善です。
ストレスが原因と見られる場合は、その原因をはっきりとさせてストレスを緩和していくことなんですね。
また、原因が自律神経失調症の場合もあるので、場合によっては心療内科の診察受けることも必要な場合があります。(厚生労働省 e-ヘルスネット参照)
研究者チームは、過敏性腸症候群(IBS)患者を治療するための、鍼治療の有効性を評価するテストをしました。
鍼治療は、過敏性腸症候群(IBS)患者に対しての、内臓過敏の軽減や腸脳軸の調整などに有益な可能性をもたらす、潜在的な生物学的メカニズムがあるとのことです。
結論は、次のように書かれています。一部を引用させていただきます。
“In this pilot randomized clinical trial, acupuncture in both the SA and NSA groups showed clinically meaningful improvement in IBS-D symptoms, although there were no significant differences among the 3 groups,” the authors wrote. “These findings suggest that acupuncture is feasible and safe; a larger, sufficiently powered trial is needed to accurately assess efficacy.”
要約すると、次の通りです。
・特定のツボ(経穴)に鍼治療をしたSA群と、非特異的なツボ(経穴)に鍼治療をしたNSA群の両方で鍼治療が症状の臨床的に意味のある改善を示した
・これらの発見は、鍼治療が実現可能で安全であることを示唆している
・有効性を正確に評価するには、より大規模で十分な検出力のある試験が必要
過敏性腸症候群(IBS)については当サイトでも「鍼灸論考」などでご紹介してきました。そちらもあわせてご参照ください。
生活習慣やストレスの原因の改善とともに、鍼治療を取り入れることも有効な手段ですね。
今回の記事の詳細については、「HCPLive」のサイトをご参照ください。
◆HCPLive – New Trial Tests Acupuncture as a Viable Irritable Bowel Syndrome Treatment
https://www.hcplive.com/view/new-trial-tests-acupuncture-viable-irritable-bowel-syndrome-treatment