「骨盤底障害の鍼治療：効果はありますか？」という記事が、産科医・婦人科医のための科学的臨床実践の翻訳に特化したアメリカの月刊誌「Contemporary OB/GYN」のサイトに掲載されています。(Contemporaryobgyn 2022.12.02)

骨盤底とは、内臓を支える一番底にある部分で、筋肉や靭帯と皮下組織からできている、恥骨から尾骨の間にある菱形のプレートのことです。

女性の場合は、膀胱・直腸などの臓器と子宮も支えています。尿道・腟・肛門などは、骨盤底を突き抜けて通っています。

ですので骨盤底は、骨盤内の内臓を支える役目と、尿や便を貯めたり・出したりする排泄の機能も担っている訳ですね。

生まれつき骨盤底が弱い人もいますが、女性はさらに出産や閉経・加齢により弱っていくため、骨盤底障害と言われる症状が出てきます。

骨盤底障害の代表的な症状は、尿失禁と骨盤臓器脱だそうです。

尿失禁とは、出したくないときに尿がもれることですが、咳やくしゃみが出た拍子に尿もれしたなど、聞いたことがある話ですね。

また骨盤臓器脱とは、腟から膀胱や子宮・直腸が外に飛び出してくる症状です。

　
この記事では、AAGLという婦人科手術に焦点を当てた最大の医学会が開催した世界会議において、Jennifer H. Fang氏が、骨盤底障害に対する鍼治療に関する文献レビューを提供したことについて書かれています。

慢性骨盤痛、尿失禁、骨盤臓器脱などの骨盤底障害は、ほぼ4人に1人の女性の生活の質に影響を与えている、ということです。

多くの女性に関わっている話なんですね。

17の研究論文の調査結果について、Fang氏は述べています。一部を引用させていただきます。

According to the findings, 8 of the 17 studies involved acupuncture’s impact on chronic pelvic pain, which included 7 randomized controls trials and 1 qualitative study. All of those demonstrated a reduction in perceived pain intensity, but 3 studies concluded no difference when compared to control groups. Urinary incontinence, Fang said, was studied in 7 of the 17 articles. All of those were randomized controlled trials, and 16 of them concluded acupuncture as at least non-inferior to other conservative treatments.
The remaining 2 studies involved the topic of pelvic floor dysfunction?1 was a randomized controlled trial and the other was a clinical trial. Both, Fang noted, found acupuncture to significantly reduce symptoms.

要点は次のようになります。

・慢性骨盤痛に対する鍼治療で、知覚される痛みの強さの減少を示した
・尿失禁は、鍼治療が他の保存的治療に比べて非劣性であると結論付けた
・骨盤底機能障害に関して、鍼治療が症状を大幅に軽減することを発見した

Fang氏は、鍼治療が慢性疼痛や失禁、骨盤底機能障害などのさまざまな骨盤底障害に使用できるツールであると結論付けています。

骨盤底を構成する筋肉を、骨盤底筋群と言いますが、よく知られているアプローチとしては、その筋肉を鍛える、骨盤底筋体操という筋トレ方法などがあります。

鍼治療でも改善できるのは、興味深いですね。

体操などのセルフケアとあわせて、鍼灸治療を試してみるのも効果的かもしれません。

　
今回の記事の詳細については「Contemporary OB/GYNR」のサイトをご参照ください。

◆Contemporary OB/GYNR – Acupuncture for pelvic floor disorders: Is it effective?
https://www.contemporaryobgyn.net/view/acupuncture-for-pelvic-floor-disorders-is-it-effective-