スポーツ現場における鍼灸師とアスレティックトレーナーの連携

鍼灸・アスレティックトレーニングの二学会による共催シンポジウム

スポーツにおいて鍼灸は、オリンピック・パラリンピックを頂点とした競技スポーツ選手、クラブ活動に取り組む生徒や学生、健康保持増進を目的とした運動をする社会人など、幅広く利用されています。昨年開催された東京2020オリンピック・パラリンピックの選手村においても、鍼灸師がメディカルスタッフの一員として活躍しました。

今年6月に開催された第71回全日本鍼灸学会学術大会東京大会では、日本アスレティックトレーニング学会との共催による公開シンポジウム「オリパラレガシーから考えるスポーツ現場における鍼灸師とATの連携の可能性」が開催され、実際に東京2020大会に携わった体験談も交えながら、4名のシンポジストによる発表とディスカッションが行われました。

鍼灸師・ATがそれぞれの立場からプレゼンテーション

1人目の登壇者は、株式会社R-body代表取締役の鈴木岳先生。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の一員として、選手村のフィットネスセンターを統括・運営するマネージャー/チーフトレーナーという立場で活動されました。

鈴木先生は、東京2020大会における「医療連携によるトータルコンディショニングサポート」について、現場の写真や動画を交えながら紹介。「診る」→「治す」→「整える」→「鍛える」というトータルコンディショニングの流れの中でも、特に「治す」(鍼灸)→「整える」(AT)の間で、これまで以上に緊密な連携を試みたことが、東京2020大会のレガシーではないかと語りました。

続いて登壇したのは、学校法人呉竹学園 東洋医学臨床研究所の所長を務める金子泰久先生。東京2020大会の選手村に設置されたポリクリニック(総合診療所)で鍼灸師として活動した金子先生は、施術の流れや内容、鍼マッサージ室の利用状況、他職種のスタッフとの連携事例など、現場の様子を詳しく紹介しました。オリンピック・パラリンピックを通して、2,000名を超える選手たちが鍼マッサージ室を利用したそうです。

3人目に登壇者した大阪電気通信大学 共通教育機構 人間科学教育研究センター准教授の眞下苑子先生は、「我が国における傷害調査標準化プロジェクトから考える」と題して発表。外傷・障害予防の実践のためスポーツ外傷・障害調査が重要であること、調査を行う際には外傷・障害調査システム/ガイドラインを参考に統一した方法で行うことが肝要であることを説明し、日本臨床スポーツ医学会と日本アスレティックトレーニング学会による共同声明として今年4月に発表された「スポーツ外傷・障害および疾病調査に関する提言書」の概説を紹介しました。

最後に登壇したのは、帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科准教授の吉田成仁先生。スポーツ鍼灸は「スポーツ活動におけるコンディショニングに用いられる鍼灸」であり、身体的・心理的問題の両面にアプローチしていくことが重要だと語りました。また、将来の展望として、鍼灸師とATがその他の多職種と共にONE TEAMとして協働(世代間協働、多分野間協働)することの重要性を訴えました。

スポーツ現場における世代間・多分野間協働へ

発表の後には、シンポジストとモデレーターの先生方も交えて、ディスカッションと質疑応答の時間が設けられ、各先生が鍼灸師・ATそれぞれの立場で意見を交わしました。

鈴木先生はディスカッションの最後に、「トータルコンディショニングサポートはオリパラレガシーとして今後もしっかりと推進していくべき。そのためにも鍼灸師とATでビジョンを統一することが必要。今も連携はできているので、さらに具体化していくためにはケーススタディが重要ではないか」と語りました。

本シンポジウムには、若手の鍼灸師・ATやその道を志す学生たちも多く参加しており、スポーツ現場での今後の世代間・多分野間協働につながる有意義な意見交換の場となったのではないでしょうか。

 
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