施術者も患者も知っておきたい!美容鍼灸のリスク管理

まずはリスクに関する正しい知識を

近年はテレビや雑誌、動画配信サイトなどで頻繁に取り上げられている美容鍼灸。興味はあるけれど、鍼灸治療の経験がなくてなかなか一歩踏み出せない……という方もいらっしゃるかもしれません。

本記事では、第71回全日本鍼灸学会学術大会東京大会で行われた、「美容鍼灸Academic Conference」との共催による座談会「美容鍼灸のリスク管理」の内容をレポートします。美容鍼灸に携わる鍼灸師を主な対象とした内容ですが、美容鍼灸のリスクについての知識を得ることは、施術を受ける人にとっても大切です。どんなリスクがあり、どうすればリスクを回避または最小限にできるのか、正しい知識を得るためにも、一般の方もぜひ読んでみてください。

パルス通電と皮下出血の関連性は?

1人目の登壇者は、日本メディカル美容鍼協会・麻布ハリーク代表の岡本真理先生。鍼通電低周波治療器を用いた美容鍼技術の普及が急速に進んでいる一方で、パルス通電を用いた美容鍼の安全性についての研究は国内外問わず乏しいという現状を説明した上で、パルス通電の有無による美容鍼の皮下出血発現頻度に関する検討について報告しました。

岡本先生が運営する麻布ハリーク2院に来院した顧客に対して、無作為に調査協力を依頼。同意を得た116名に調査票を配布し、105名から調査票を回収しました。105名のうち、パルス通電なしが53名、パルス通電ありが52名。皮下出血発現頻度の群間比較をしたところ、パルス通電なし群は18.9%、パルス通電あり群は15.4%となり、有意差は見られなかったとのことです。

この結果からの考察として、岡本先生は「美容鍼の施術において、パルス通電が皮下出血発現のリスクファクターにはならないことが示唆された。これは、美容鍼にパルス通電を安全に使うための一つの根拠になり得る」とコメントしました。

予防策や対処方法を共有することが大切

2人目の登壇者は、公益社団法人 全日本鍼灸学会 安全性委員の古瀬暢達先生。美容鍼灸に関連する苦情や顔面部の有害事象(※)についてのデータや事例を紹介した上で、美容鍼灸および顔面部への施術におけるリスクマネジメントについて解説しました。
※有害事象:因果関係を問わず治療中または治療後に発生した好ましくない医学的事象

古瀬先生は、データや事例を踏まえて、皮下出血の予防策として「細い鍼を使用し、強刺激を控える」「患者に痛みを我慢しないように伝える」「顔面刺鍼時には、患者に話をしないでもらう」「施術後は激しい運動や飲酒、温熱療法を避ける」などの対策を紹介。もしも皮下出血が発生した場合は、「皮下出血の多くは1~2週間で消失する」「直後は保冷剤などで冷やし、炎症が収まった数日後には温めて血行を促進すると治癒が早まる」など予後の予測や対処方法を患者に伝え、誠意をもって対応することが大切だと説明しました。

また、施術側のリスクマネジメントとして、インフォームド・コンセントを徹底すること、近々の大事なイベント(結婚式や写真撮影など)がないか患者に確認すること、皮膚疾患・出血傾向・服薬など既往歴を確認することの重要性を訴えました。

美容鍼灸のさまざまなリスクを検討

2人の発表の後は、司会の先生や会場・オンラインの参加者も交えて、ディスカッションと質疑応答が行われました。

参加者から「岡本先生はそもそもなぜ、パルス通電あり・なしで比較するデータを取ろうと考えたのか」という質問があり、岡本先生は「パルス通電によって皮下出血のリスクが高まるのではないかという懸念があったため」と説明。結果として有意差は見られなかったことも踏まえ、「パルス通電の有無による効果の違いなどは、今後研究が必要になってくるのではないか」とコメントしました。

他にも、麻布ハリークにおける皮下出血以外の有害事象の紹介や、感染予防のために化粧を落とすべきかどうかなど、美容鍼灸に関連するさまざまな話題について活発な意見交換が行われました。

美容鍼灸に携わる鍼灸師はもちろん、施術を受けている人や今後受けてみたいと関心を持っている人にとっても、知っておくべき有益な情報がたくさんあったのではないでしょうか。リスクを完全にゼロにすることはできなくても、施術者と患者の間で、疑問や不安を解消するようなコミュニケーションや正しい情報共有ができていれば、リスクを回避または最小限にすることは可能でしょう。

 
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