「 鍼灸(しんきゅう)ニュースレター No. 1 」をリリース - 鍼灸界の動き

鍼灸Newsletter しんきゅうニュースレター  No.1 2007年12月発行

News Flash/鍼灸界の動き
1. 鍼灸専門学校入学者に医療資格者が増加
2. パーキンソン病治療への関心高まる
3. 期待される動物への鍼灸治療

Topics/鍼灸最前線
1. ニーズに応える鍼灸院
 「女性専用」、「バイリンガル対応」、「メタボリック対策」、
 「きれいになりたい」等々ニーズに細やかに対応するサロン的鍼灸院が
 身近に増えてきています
2. 現代の病と鍼灸:アレルギー性疾患
 明治鍼灸大学附属病院で長年「アトピー治療」に携わってきた江川先生に
 お話を伺いました

Event Report/鍼灸関連イベントからの話題
1. 全日本鍼灸マッサージ師会大会 inなにわ
  婦人科疾患の鍼灸
2. 日本鍼灸師会全国大会
  Dr.コトーのモデルになった瀬戸上医師、離島医療の現実を語る
3. 日本伝統鍼灸学会学術大会
  吉川正子氏の接触鍼実技が評判
  脳性マヒ児が野球部に入るまで改善した症例発表

 

1. 鍼灸専門学校入学者に医療資格者が増加

 (社)東洋療法学校協会が加盟 43 校に実施した「平成 15 年度~平成 19 年度 入学者の構成に関するアンケート調査」によると、この 2-3 年で、現役の医師を含む医療資格取得者が増えていることが見受けられます(グラフ参考)。最も多いのは柔道整復師。次いで看護師、准看護師、理学療法士、保健師等。また、歯科医や歯科衛生士、歯科技工士も見られます。

この背景には、鍼灸が、西洋医学をはじめ美容やスポーツ等の様々な分野と融合し始めたことがうかがえます。
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2. パーキンソン病治療への関心高まる

 明治鍼灸大学附属鍼灸センターでは、1989 年に京都駅前に新たに「明治鍼灸大学附属京都駅前鍼灸センター」をオープンし、明治鍼灸大学と附属病院の連携により、東洋医学の特徴と長所を生かした鍼灸治療を行っています。

同センターでは2004年10月、一般外来に加えて専門外来を開設しました。高血圧症、男性更年期、スポーツ障害、アトピー性皮膚炎に加えて、パーキンソン病の鍼灸治療専門外来を鍼灸学博士・江川雅人先生が担当しています。パーキンソン病専門外来に関しては、今年に入ってから来院者が増加の一途にあり、一日に 20 人近い患者さんが来院されることもあります。

江川先生によれば「薬物療法とは違い、鍼灸は副作用もなく、また痛みの緩和やパーキンソン病特有のうつ症状の緩和という点で非常に有効です。慢性の疾患ですので、治療を継続することが必要ですが、遠方からも多くの患者さんが来院されます」。

◎明治鍼灸大学附属京都駅前鍼灸センター Tel (075)361-8998 http://www.meiji-u.ac.jp/ekimae/index.html

3. 期待される動物への鍼灸治療

 去る10月、“岩手大学発ベンチャーの「いわて動物鍼灸センター」が動物専用の鍼灸鍼を開発”というニュースが、各マスコミで報じられていました。15年前から動物への鍼灸治療を行っている「かまくらげんき動物病院」の石野孝院長(写真)によれば、「動物専用鍼の開発ということは、それだけ動物への鍼灸治療への関心と期待が高まっていることの証拠」だそうです。

 石野院長が獣医師として鍼灸を始めたきっかけは不思議な因縁。「鍼灸師の父親を持ち、プレセボ効果(心理的な影響)を受けやすい人間への鍼灸治療を見るにつけ、私自身は鍼灸を非科学的として受け入れられなかったのです。それで、動物なら治療に対してのプレセボ効果がないだろうと、獣医を志しました。大学を出て農業高校の教員をしていたとき、動けなくなったブタに鍼をしてみたら、歩けるようになったのをみて、動物に鍼灸治療を始めました」。

「1992年の開業当初から治療で鍼灸をしていますが、長い間“怪しい獣医”という見方をされていました。ところが、最近では飼い主さんも関心を持ち、獣医さんたちも鍼灸を学んでいます。
ペットの寿命も伸びている一方で人間同様に生活習慣病も増えていますので、従来の西洋医学的な治療だけでは、難しくなっているのでしょう」。

「すべての獣医師がスタンダードな鍼灸治療ができるようなマニュアル作り」、「動物への鍼灸の科学性の追求」、そして「欧米から学ぶ状態から離脱し独自の鍼灸治療を日本から海外に普及させていく」ことが石野院長の目標だそうです。

◎かまくらげんき動物病院
神奈川県鎌倉市手広 6-1-1 Tel (0467)32-9113

http://www.genkivet.com/index.html

Topics 現代の病と鍼灸:アレルギー性疾患

が蔓延しています。薬物投与や外科治療で対処してきた西洋医学だけでは治せない、病気ではないけれど「なんとなく不調」、あるいは原因が分からない症状に悩まされている人々が、子どもから高齢者まで、幅広い年齢層で増加しています。

一方では、社会の高齢化に伴い、いつまでも元気で若々しくありたい、との願いも万人共通のものとなり、「病気にならないための医療=未病」への関心が広まってきています。

こうしたなか、古くからの医療が見直され始めていますが、なかでも東洋医学の中核を成す鍼灸は世界中で注目され、鍼灸のメカニズムを解明する研究も各国で進められています。

今回は、現代の疾患のなかで、前述のパーキンソン病に取り組む以前から、アレルギー、特にアトピー性皮膚について、長年、治療と研究を進めている明治鍼灸大学の江川雅人先生に鍼灸の可能性についてお話を伺いました。

Q 先生がアトピー性皮膚炎を研究テーマにしたきっかけは?

A. 大学を卒業した直後は内科学教室に所属する鍼灸師として、内科系疾患が研究テーマでした。その中でも、私自身が気管支喘息を持っていて、患者さんの気持ちが理解しやすいということから、最初はアトピー性皮膚炎ではなく、気管支喘息の鍼灸治療を研究テーマにしていたのです。ところが 80 年代後半から、気管支喘息に代わって、アトピー性皮膚炎の患者さんが非常に多く来院されるようになりました。同じアレルギー性疾患ということで、喘息からアトピー性皮膚炎に研究の対象が移ってきたわけです。

Q 素人から考えると、鍼灸とアトピー性皮膚炎とが結びつかないのですが

A 明治鍼灸大学附属鍼灸センターに来院されたアトピー患者さんのほとんどは、すでにステロイド外用剤などの標準的な治療を受けています。それでも症状のままならない患者さんが鍼灸治療に期待して来院されます。したがって、アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療の研究は、患者さんからの強い希望が発端です。薬物療法でも効果がなかった患者さんをどのように治療していくか、手探りで臨床を繰り返していくうちに、研究の形が出来上がったというわけです。

Q 当時は、アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療法はなかったということですね

A. アトピー性皮膚炎に関しては症例報告も多くは認められませんでした。ただ、東洋医学には「弁証論治」と呼ばれる特有の診断―治療過程があって、疾患に関係なく、食欲がなくて身体がむくむということであれば脾が弱いとか、足腰が悪くて髪の毛が抜けやすいということであれば腎の病症だとか、イライラして目がチカチカしていたら肝の病だというように、全身の状態から東洋医学的な判断と治療を行います。

当初の鍼灸治療はこうして始めていきました(ここでいう肝、心、脾、肺、腎は東洋医学的な臓の名称で、解剖学的に呼ばれるそれとは若干の違いがあります)。

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Q 鍼灸治療の方法は?

A. 前頁の表1に示す通り、私共の治療では、皮膚の症状から患者さんを4つのタイプ(弁証)に分けて鍼灸治療を行っています。各々の弁証に対する治療の原則(治則)に従って治療点(経穴)を決めていくのです。また、ほとんどの患者さんは表 2 に示すような全身の随伴症状があります。これらの随伴症状
は、皮膚炎の悪化と同時に増悪するか、皮膚炎悪化の予兆として増悪してきます。こうした症状に対してもきめ細かく治療を加味することが重要です。従って、治療内容は人それぞれに異なります。

Q アトピー性皮膚炎に対して、鍼灸医学と西洋医学では治療に対する考え方が違うのでしょうか

A. 私は、西洋医学ではアトピー性皮膚炎を皮膚の病気だとみているように感じます。西洋医学ではアトピー性皮膚炎の病態に関する皮膚における研究は、近年、極めて細かいレベルまで行われています。

細胞から放出されるサイトカインの発現や免疫細胞のかかわり合いなどです。こうした皮膚の病態を改善するために、西洋医学では「塗る薬(外用薬)」を重視しています。アトピー性皮膚炎の治療において最も信頼性と安全性の高い外用薬はステロイド外用剤であり、それに続く外用薬としてタクロリムス外用剤があります。これらは抗炎症作用、免疫調整作用を有する外用薬として高い治療効果をあげています。二次元的な広がりをもつ皮膚という器官に「塗る」という局所的な治療を行うのが、西洋医学の視点だと思います。

一方、鍼灸医学では、皮膚をより立体的(三次元的)にとらえる視点を重視しています。東洋医学では、皮膚は肺と深い関係をもつと考えられています。さらに肺は「肝、心、脾、肺、腎」の中で互いに関連しあいながら機能しています。皮膚に異常があるとき、皮膚をつかさどる肺にどのような影響が及んで
いるのかを考える必要があります。

そう考えるとき、皮膚は身体全体の機能と関連していることが意識されるわけです。皮膚そのものよりも「皮膚を全身の機能との関連性の中でとらえていく」、これが鍼灸医学の視点だと思います。

Q 身体全体から診ていくのが、鍼灸医学の考え方だということですか

A. かゆみを伴う湿疹がアトピー性皮膚炎の主な症状であることは間違いありません。でも診察すると、症状は皮膚だけにとどまらないのです。特に成人のアトピー性皮膚炎の患者さんのほとんどに、肩こり、足の冷え、易疲労、精神的なイライラ、便秘、生理不順など、皮膚症状に随伴する様々な全身症状がみられます。

でも、患者さんのほとんどは附属鍼灸センターに来院されるまで、外用剤や保湿剤で皮膚の治療やケアは行っても、皮膚以外の症状のケアは受けてはいません。

鍼灸医学では、こうした随伴する症状を含めた全身的な治療を行うところに特徴があります。易疲労、精神的なイライラなどは、実際に西洋医学では対処しにくい症状でもあり、鍼灸治療はこうした症状をコントロールするのに優れた治療法だと思います。

皮膚の組織は日々新しく生まれ変わりますからね。随伴する症状を緩和することが、皮膚の正常な機能回復に結びつくものと考えています。身体のひずみを治すことが自然治癒力を高めて、アトピー性皮膚炎への治癒へと結びつくのだろうと考えています。

Q でも西洋医学も否定されているわけではない?

A. 前述した通り、ステロイドやタクロリムスの外用剤は抗炎症作用、免疫調整作用を持ち、専門医により処方を受けることで高い治療効果を得ることができます。鍼灸治療には即効性はありません。あくまでも全身の機能調整を通して皮膚の機能回復を求めるものです。

したがって、強い炎症(かゆみ)や急激な症状の悪化時には、まず薬物療法が有効でしょう。そして同時に鍼灸治療を行って身体のひずみを治すことが、アトピー性皮膚炎では重要なのです。すなわち、西洋医学と鍼灸医学、それぞれの得意分野を生かした「統合医療」が有効であると思います。

Q アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療の臨床成果は?

A ステロイド療法などでも症状が持続していた45症例に対する鍼灸治療の結果から、平均24回の鍼灸治療により、約8割の患者さんに皮疹の改善やかゆみの軽減が認められました。また、治療を20回、30回、1年と継続することで、かゆみの軽減する症例の割合が高くなりました。治療を継続し、成果の上がった症例では、血中のIgE抗体値や血中好酸球数も減少しており、いわゆるアレルギー状態が改善されるという臨床結果もみられました。アトピー性皮膚炎の治療において、鍼灸治療は大きな可能性のある治療法だと思っています。

鍼灸学博士
江川 雅人(えがわ まさと)先生
’87 年 明治鍼灸大学卒業
同大学附属病院研修鍼灸師、教員養成課程を経て、東洋医学臨床教室助手。
’03 年 老年鍼灸医学教室(現 加齢鍼灸学教室)の講師に就任。
’04 年「アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療の効果に関する臨床定研究」で学位取得。
現在は「パーキンソン病」「高齢者のうつ」を研究テーマに臨床と学生の指導を担当。
明治鍼灸大学 http://www.meiji-u.ac.jp/index.php
明治鍼灸大学附属鍼灸センター http://www.meiji-u.ac.jp/cli_orie/index.html

 

 
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